タバースと一口にいっても、利用するデバイスによって性能や機能には大きな違いがあります。
特に話題になるのが Meta Quest(スタンドアロン型VR) と PC VR の格差です。
この差は、単に「画質が違う」だけではなく、アバターやワールドの体験そのものに影響を与えています。
Meta Questはスタンドアロン(PCなしで動作)なので、
ハイエンドPCと比べると 処理能力・メモリ容量が大幅に限られます。
そのため、VRChatなどのプラットフォームでは次のような制限が設けられています。
・ポリゴン数の上限:複雑な3Dモデルは読み込めない
・テクスチャ解像度の制限:細かい質感表現がカットされる
・シェーダーや特殊エフェクト非対応:髪の毛の透け感、発光演出などが使えない
・ボーン数・物理演算制限:服や髪のリアルな揺れが削られる
つまり、PC向けに作られた高精細アバターは、そのままではQuestで動かせません。
制作者は「Quest対応版」を別途作り直す必要があり、その労力が新たなハードルになります。
アバターだけでなく、ワールド(仮想空間)にも制約があります。
Quest版では以下のような制限があるため、PC限定ワールドが多数存在します。
・容量上限(MB数):大規模ワールドやオブジェクト量の多い環境はアウト
・処理負荷の制約:大量の動くギミックや光源演出は不可
・動的シャドウやポストプロセス非対応:雰囲気重視の演出が削られる
・スクリプト制限:複雑なギミックやインタラクションが動かない
その結果、PC版のユーザーは「豪華でギミック満載の世界」を自由に歩けますが、
Questユーザーは「軽量化された簡易版」や「入場不可」の場合が多いのです。
この制約は、単なるスペック差を超えて コミュニティの分断 を生んでいます。
・一緒に遊べない場所がある
→ PCユーザーが訪れるワールドにQuestユーザーが入れない
・見た目の差が大きい
→ Quest向けアバターでは表現が簡素になり、「別キャラ?」と思われるほど変わる
・制作者の負担増
→ 1つのワールドやアバターを2バージョン管理する必要があり、更新の手間が倍増
これはQuestの性能が低いからだけではありません。
VRChatなどの運営は、Quest版の快適性を保つために「最低限の動作保証」を設定しています。
もし高負荷ワールドを許可すると、Questがクラッシュしたり発熱で落ちたりする危険があります。
つまり制限は、快適な体験と安全性のための“保険”でもあるのです。
・最初からQuestを想定して制作
→ 軽量設計を前提に作れば、PCでも動きつつQuestにも対応可能
・ギミックをオプション化
→ Questではオフ、PCではオンという設定を用意
・LOD(Level of Detail)の活用
→ 遠くでは軽量モデル、近くでは高精細モデルを表示
・クロスプラットフォームイベントの企画
→ 両者が同じ場所で遊べる「軽量ワールド」を使う日を作る
Quest版とPC版の格差は、「性能の壁」と「運営による安全性のための制約」の両方が原因です。
この差を完全になくすのは難しいですが、制作者の工夫やイベント設計次第で
両方のユーザーが交われる場を作ることは可能です。
今後、Questの性能向上やプラットフォーム側の最適化技術が進めば、
この格差は少しずつ縮まっていくでしょう。
ただし、その日が来るまでは「別環境で遊んでいる」という前提を理解し合うことが、
快適なメタバース体験の第一歩です。